マスクメロンに対する建築家の回答
「壁とマッカーサー」デイリーポータルの記事で壁が紹介されました。
図らずも壁からつながった幻のマッカーサー道路計画、ほんと興味深かったです。
ゆくゆくは新橋の計画道路地帯内に超高層ビルが建っちゃって、そこに今までの土地や家の権利が集約される。
権利をもたない賃貸の飲み屋経営者は新橋から出て行かざるを得ない。
立体道路制度初の施工例、事業者は東京都と森ビル。
たぶん今になって計画が進み始めたのは今度の東京オリンピック、予定地には築地市場も絡んでて、アスベストとかなんて関係なかったんじゃん、って事か。
過去は繰り返されるんだ、前のオリンピックで作った高速道路のように。
で日本橋問題みたいに、40年後のお偉いさん達が的外れな文句とかつけたりするのかな。
それから、ずーっと気になってた事。
なぜ、亀裂の入り方がランダムなのかとか、そもそもなんでこんなマスクメロンにまで至っちゃうのかとか。
積年の思いをはらすべく、建築家の知人のKさんに質問してみた。
以下回答です。長いです。
「この建物は木造で、外壁は柱の外側に何らかの下地を貼って、その上にモルタルを塗り、さらに塗装を吹き付けて仕上げたものと思われます。
壁面に見えている網の目状の白い筋は、そのモルタルにできた亀裂を補修したものと考えて間違いありません。
一般的に、モルタルの外壁に生じる亀裂には、以下の2種類があると思われます。
1.地震・台風などの外力によって生じる亀裂
2.モルタルの収縮によって生じる亀裂
2番の、モルタルの収縮による亀裂というのは、モルタルを塗って、それが硬化していく過程で、モルタル自身が収縮して生じる亀裂です。
これは、モルタルという材料の特性上必ず発生し、壁面に無数に存在するのですが、普通は目に見えないほどに小さなものです。
1番は、木造建築に地震などの外力が加わった場合、その軸組(構造体)が変形し、それが壁下地に伝わって、モルタルに生じる亀裂です。
例えば、壁下地がボードの場合、隣接するボード同士のつなぎ目に変形が集中して、それらがお互いにずれ、伸縮性に乏しいモルタルは、そのずれに追随することができず、その付近に亀裂を生じさせてしまうのです。
従って、下地がボードであれば、亀裂はボードの目地にほぼ沿った形で、碁盤の目状に走ります。
それに対し、この写真の建物の場合は、亀裂がかなりランダムに現れているので、もし地震などの外力によってできたものだとすると(そうに違いないとは思っていますが)、下地はボードではなく、木摺(きずり・幅が5〜10の板を少し隙間をあけながら平行に貼ったもの)
である可能性が高いように思います。
外力によって新たにできた亀裂だけではなく、この壁面に当初から存在していた、モルタルの収縮による亀裂(2番の亀裂)の内のあるものが、外力による下地の変形をうけて、大きな亀裂に成長したものも含まれているかもしれません。
しかし、壁の下地が木摺であれば、いつでもこのような亀裂が生じるのかというと、必ずしもそういうわけではないでしょう。
写真を眺めてみると、ちょうど屋根裏の外部にあたる上の方の壁面に比べ、1・2階の外部に相当する下の方がかなり汚れて見えているので、この建物の手前には、以前かなり接近して隣の建物が建っていたのではないかと推測できます。
ケラバ(屋根の側面の、写真で「へ」の字に見えている部分)がほとんど出ていないことも、この建物が隣地境界線ぎりぎりに建てられていることを示しているように思えます。
即ち、この建物を建築する際、この壁面を外側から施工するのに十分な空間的余裕が、隣の建物との間に確保されていなかった可能性があります。
下地を作る大工や、モルタルを塗る左官屋に、自分達の身の置き場を容易に確保でき、作業を円滑に進めることができるだけのスペースが、十分になかったのではないかということです。
そのため、手を抜いたとまでは言い切れないにしても、施工に何らかの甘さが出たのではないかと、考えられなくもありません。
それが、このような亀裂を生じさせる遠因である可能性もあると思います。」
ありがとうございます!Kさん。
下地が違うんですね、なるほど。
そしてレアである原因は、施工が甘くないと生まれない、ってこと。
それでこそ人間の手のなせる業!と賞賛したいのですが、またこんな意見は建築サイドに眉をしかめられますね、分かってます。
地方より東京の方がこういう壁が多いのも納得。
↑この写真の格子状の亀裂は、下地が石膏ボードであることが推測される一品。
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