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2008.04.12

頭の中は桃色

2年前の4月、祖父が86歳で亡くなった。
今でも祖父のことはよく思い出す。
当時近くに住んでいたこともあって、祖母と姉と私とで祖父の認知症の介護をしていた。
その日々のなかには、きれいごとでは済まされない日常がでーんと横たわっていた。
けど、今の自分にとって大きな存在であり、考えの根幹にあるのは、あの頃の時が止まったような日常だと思う。
そんなことをなぜ今思い出すのかというと、ちょうど読んでいた田口ランディの「寄る辺なき時代の希望」のなかに、

「認知症の人達は、人間という着ぐるみを脱ぎ捨てて、命そのものになって輝いていた。」

という一節があり、私はそれを実体験としてまざまざと見せつけられてしまったからなのだな、とすごく腑に落ちたからです。

祖父は毎日「こんなことは初めてじゃ。」とつぶやきながら、何に対しても新鮮に驚いていた。
着実に死へ向かい、あらゆることを忘れながらも、祖父が私の手を握る力はすごく強く、毎日たくさん食べ、意固地を張り、ほんとうに「命そのものになって輝いていた」と思う。

私は、祖父のかたちが、2時間くらいは平気で微動だにしなかったりする姿が、生き仏のように愛らしくて、いつもじっと肌を見ていた。
年を重ねた人の皮膚は本当に美しいのです。
今でもありありと浮かぶ、おじいちゃんのほっぺたのシミ、皺、色つや、毛細血管までも。

そしてその頃は、祖父の頭の中にはどういう世界が広がっているのか、ということが気になっていて、勝手にお花畑が広がっているだろう希望的観測を膨らませていた。
なのでよく、祖父に
「ねぇ今のおじいちゃんの頭の中は何色?」と質問していた。
認知症を患った人は、記憶力の低下から具体的な質問に答えられない事をストレスに感じていて、その分普遍的な質問には飛びついて答えてくれることを利用した、すごく自分勝手な質問だったと思う。
ただそれは面白いくらい祖父の心理状況を表していて、「桃色じゃ」と答えてくれた時は勝手に非常に満足した。

しかもそれが現実になったのだ。(ここからの話は少しばかばかしいので読み流してください)
埋葬した後、お棺から出てきた骨は頭蓋骨の辺りがほんのり桃色で、お腹の辺りがほんのり抹茶色だった。
埋葬場の人は「こんなことはあんまりないのですが、献花の色でしょうかね?」と言っていたから、事実その通りなんだろうけど、私にはおじいちゃんの頭が言葉通りに桃色だった!ということに、また泣けてしょうがなくて、でもなんだか嬉しくて、複雑な思いをしまくりました。

書かずにはいられなく思いつくまま長駄文すみません

追悼、おじいちゃん

 

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コメント

こんにちは。ずっとこっそり拝見しております。
(熱中時間第2回目の出演も!)
壁に関しても書くべき感想がありすぎて、返って何も書けなくなっておりました。coldsweats01
(私は教養が無いので、発信された情報や何らかの感覚が溢れると、言語化できず絶句状態になるっぽい?)
なぜkimiさんが撮影した壁画像を見ると絶句してしまうのか、おじいさんのお話を読んで、何となく分かったような、分からないような。
でも、何か繋がった感じがしております。apple
それではまた、ひっそりこっそり。

(顔文字使えるんですね…footpenguin

投稿: 山田 | 2008.04.12 16:54

山田さん>
コメントありがとうございます。こちらこそブログ拝見させて頂いてます。
何かつながった感じ、との鋭いご感想、ほんとうにそうなんだと思います、意識的にではないですがつながっています。
私も同じですよー、言語化するときに思いが強いほど頭が混乱します。(でも壁絶句は恐縮です、、)

投稿: kimi | 2008.04.13 00:57

こんにちは。
なんだか秀逸なエッセイを読んでしまった気分で、私とは圧倒的に違う感受性の鋭さが、あーやっぱり非凡な方なんだなーと思い知らされて、改めて尊敬です。

あと、ちょっとヨイモノを貰った気がします。
ありがとう。

投稿: | 2008.04.14 00:14

こんばんは。コメントありがとうございます。
あ、恐縮過ぎます。。

投稿: kimi | 2008.04.15 00:06

久々にkimiさんのブログを読ませていただいていて、
やっぱりいい壁をお撮りになるなぁと読み進んで(というか
5月から4月までさかのぼってきて)ここで号泣してしまいました。
「おじいちゃんのシワが好き」話を聞いていたので
勝手にいろいろ想像してしまいました。
おばあちゃんも素敵だし。
あととても素敵な文章で感動してしまいました。

投稿: スズキ | 2008.05.15 18:09

スズキさん、お久しぶりです!
おじいちゃん愛がちょっと過度に出すぎましたね、お恥ずかしいです。。
ルミネのカフェで6時間お話したこととか、懐かしいですねー。お仕事頑張ってらっしゃいますか?またお会いしたいなぁスズキさん。

投稿: kimi | 2008.05.17 23:17

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