鞆の津ミュージアム「Re:解体新書」
2012年5月に広島県福山市鞆の浦に開館した「鞆の津ミュージアム」。最初に知ったのは流れてきたtweetの情報だったか、「こんな美術館があるなんて!」と驚いた。
アール・ブリュットの美術館と銘打ち、障がいのある人、ヤンキー、老人、死刑囚などを始めとする、これまで芸術の範疇としてあまり触れられることがなかった人々に焦点を当てた企画展を開催しているという。しかもこれまで一定の方向からのみ曖昧に語られていたようなことにまで切り込んでいて、HPを見ているとタイトルもテキストも良い意味でとても攻めているのだ。
アール・ブリュットの美術館と銘打ち、障がいのある人、ヤンキー、老人、死刑囚などを始めとする、これまで芸術の範疇としてあまり触れられることがなかった人々に焦点を当てた企画展を開催しているという。しかもこれまで一定の方向からのみ曖昧に語られていたようなことにまで切り込んでいて、HPを見ているとタイトルもテキストも良い意味でとても攻めているのだ。
これは気になってしょうがない。行きたい、行くしかないと思いつつも、いかんせんその存在を知ったのが子が産まれる直前だったため、これまでは過去の企画展をまとめた書籍「障害(仮)」、「シルバーアート」、「ヤンキー人類学」を読んで期待を膨らませつつ、満を持して先週末、尾道を経由して「鞆の津ミュージアム」へ、初訪問を果たしました。
現在、開催中の企画展は「Re:解体新書」。
杉田玄白の翻訳書『解体新書』になぞらえて、「からだ」に焦点を当て、その多様なあり方にまつわる作品が展示されている。出展者は全部で11名で、筋肉画家、家紋研究者、元編集者、統合失調症とつきあいながら制作を続ける人、アーティスト、ドラァグクイーン、専業主婦などバラエティに富む。こうした「からだ」という誰にとっても普遍的なテーマをひもときながら、美術の外にあるものと中にあるものをないまぜにしていくキュレーションの卓抜さが、見る者の既成概念をがんがんと揺さぶってくる。
前述の「アール・ブリュット」とは、フランスの画家、ジャン・デュビュッフェが提唱したもので、その訳は「生の芸術」。正規の美術教育を受けていない人が自発的に生み出した作品を指している。私は若い頃からデュビュッフェの絵画が好きで、スイスのローザンヌにあるアール・ブリュット美術館も訪ねたことがある。ただ彼が提唱するように「教育を受けていない」ことが大事だと思っているのではなくて、そこはどちらでもよくて、個人の内部にあるものが境界ギリギリのところで裂けて爆発してしまったような、「見る/見られる」の関係性を超えたところにある作品に強く惹かれる。手描き地図を半世紀描き続けた増田善之助さんが好きなのも、空想地図が好きなのも、こうしたとめどない情熱が溢れ返っているところに理由のひとつがある。
今回の展示もそうした惹きつけられる作品ばかりで、なかには個人的に長く見続けることができない強烈なものもあった。まだ会期も長いので紹介はひとつだけ。
渡辺航一郎さんの作品は城や櫓といった構造物が面的に連鎖していく緻密なもの。彼は「家紋研究者」を名乗っており、絵をよく見るといたるところに家紋が登場する。加えて、現実にあるもの(例えば他の作品では、宮島の鳥居とか、高島屋の看板などが描かれている)と空想が混在する世界が描れている。渡辺さんの脳内と実空間の境界が表出した絵画群は見ているだけで吸い込まれていきそうだが、これは下書きなしで描かれていると伺い、さらに驚く。
渡辺航一郎さんの作品は城や櫓といった構造物が面的に連鎖していく緻密なもの。彼は「家紋研究者」を名乗っており、絵をよく見るといたるところに家紋が登場する。加えて、現実にあるもの(例えば他の作品では、宮島の鳥居とか、高島屋の看板などが描かれている)と空想が混在する世界が描れている。渡辺さんの脳内と実空間の境界が表出した絵画群は見ているだけで吸い込まれていきそうだが、これは下書きなしで描かれていると伺い、さらに驚く。
ちなみに一緒に行った3歳の子どもは、サエボーグさんの作品「HISSS」がいちばん好きとのこと。今後の企画展も楽しみでならない。また、絶対に行く!
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