2014.05.29

『この写真がすごい2』

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大竹昭子さん編著による『この写真がすごい2』が、5月28日に朝日出版社より発売されました。この本は『この写真がすごい2008』の続編で、70枚の写真が紹介されています。

何よりこのシリーズが面白いのは、題名や撮影者の名前が写真とともに掲載されず、大竹さんの言葉のみで綴られているところ。大竹さんの深い洞察力による豊かな言葉は、写真と向き合って生まれた個人の解釈というスタンスが貫かれています。そこで読んでいる側も、大竹さんと対話しながら一緒に写真を見ているような気分に。そのうちにいつの間にか、自分なりの写真への向き合い方が生まれていくように感じるところも「すごい」本であります。

そして今回の第2弾で、たいへん光栄なことに壁写真を70枚のうちの1枚として選んでいただきました。いや、自分では見飽きるほど見ていた写真なのですが、この手法で編集されると、まるで知らない人が撮ったように客観視してしまうのだから不思議です。

前作もそうだったのだけど、夢中になってぐいぐい最後まで読んでしまう。デザインは寄藤文平さん+杉山健太郎さん。ところどころ挟まれるカラー1色のページも意味深でパンチが効いてます。興味のある方は、ぜひお手にとってご覧になってみてください。

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2013.03.06

『コンフォルト』2013年4月号

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3月5日発売の『コンフォルト』2013年4月号にて、9ページにわたり壁の写真が掲載されました。
今号の特集は「時間を取り込むデザイン」。
扉に書かれた「人の営みや風に晒された痕跡が残る、そんな空間に惹かれる人が確実に増えています」とのテキストは、まさに私のような人を指しているのかと。
内容はそんな要素を建築に取り入れた長坂常さんや、リノベーションを施した若松均さんなどが巻頭で紹介されています。他にも好きな質感の壁や内装がページをめくるごとに表れ、ちょっとたまらない特集です。
興味のある方はよかったら本屋さんで覗いてみてください。

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2012.12.18

壁撮りおさめ3

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すこし子宮の話を。
今の私の子宮は通常の約1000倍ほどのサイズとなっているそう。普段はなりを潜めてひっそりとしている子宮がこんなにも威風堂々と大きくなるなんて、生命体の不思議さに改めてびっくりしてしまう。子宮は他の器官をを押しのけてぐいぐいと大きくなり、ついにはお腹の皮をも引き延ばしていく。自分の体がムーミン形に変化していく様をこの十月十日、興味津々で見つめ続けてきた。
自分が巨大な「いれもの」になっていくという感覚はなんとも形容しがたいもので、私はよく言われる「母子一体感」よりも「別個体感」を感じていたように思う。特に胎動が激しくなるにつれ別の強い意志みたいなものを感じることが多かった。実際、未だにこのムーミン腹に人間の形をした赤ちゃんが入っていることが信じられず、出てきたらウサギだったりオオサンショウオだったりしてもおかしくないんじゃないかってくらい実感が湧かない、のです。
 
※写真、上は道端に立つ掲示板の裏側、水色のビニール塗膜が亀裂をつくりかけている。下はタコ型すべり台の剥がれ壁。

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2012.12.17

壁撮りおさめ2

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雑貨屋さんの立て看板。鉄材の板に赤の錆び止め+青の塗料が剥がれ気味。
付け根部分に水が溜まり、苔むして膨れあがっていた。

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2012.12.16

壁撮りおさめ1

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今年の春に妊娠が判明し、出産予定日までいよいよ残り数日となりました。
といっても予定日ぴったりに産まれてくる赤ちゃんは約5%だそうで、正期産と呼ばれる出産期間は予定日の前3週後2週の計5週と幅広く、母体のこちらは赤ちゃんが「よし、外に出よっかなー」と動き出す「その日」をただ首を長くして待っているのみ。
そこで今は病院の助産師さんの「とにかく散歩を!」の指示のもと、ここぞとばかりに毎日お腹&カメラを抱えて、壁の撮りおさめに歩く日々です。
徐々に壁が溜まってきたので、「その日」が来るまで少しずつアップしていこうかと。
 
※写真は、実家近くの公園にあるタコの形をしたすべり台の剥がれ。

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2011.07.01

『そこへ行くな』

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井上荒野さんの小説『そこへ行くな』が6月24日に集英社より刊行されました。今回、表紙カバーに壁を使っていただきました。

井上さんの小説は7つからなる短編集で、タイトル『そこへ行くな』に象徴されるようにすべて場所にまつわる話になっています。
「遊園地」「団地」「病院」「野球場」など、普遍的な場所が、急に複数の意味を持ち輪郭を帯びてくるような瞬間が精緻に描写されていて、ぞくぞくっとします。そして、あとを引きます。

この表紙カバーの写真は2007年8月に高田馬場で撮ったもの。(洋泉社『壁の本』に収録されています)
4年経った今、まだ存在してくれているだろうか…と再度行ってみました。
あの日は確かとても暑くてふらふらと歩いていたから細かな記憶がなく、たどり着けるかわからなかったのですが、

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みつけました。細い路地にひっそりと佇んでいました。
同じアングルで比較すると、白いテープ跡がすっかり剥げてサビも進行。白いところはあらたに落とされたらしい鳥の糞だけ。
ああ、育っているなぁ、健在でなにより。と感慨深い心持ちで帰途につきました。

デザイナーは大久保明子さん。
カバーだけでなく、表紙や本文のデザインにまで壁の貼り跡が続いています。カバー紙のざらざらとしたさわり心地も色使いも魅力的。ご興味のある方、よかったら本屋さんで手にとってみてください。

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2011.05.17

『移動動物園』と『黄金の服』

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小学館文庫より発売された佐藤泰志さんの小説『移動動物園』『黄金の服』のカバー写真に「壁」を使っていただきました。

佐藤泰志さんは、1949年函館生まれの作家で、1990年に41歳で亡くなられた方。
亡くなった後、残された書籍が絶版になっていくなか、昨年冬より公開中の映画『海炭市叙景』(熊切和嘉監督)で再度評価が高まり、今年になってから次々と文庫化される運びに。そのなかの2冊が『移動動物園』と『黄金の服』です。

『移動動物園』は恋ヶ窪(国分寺市)、『黄金の服』は国立市が小説の舞台。
だったら小説の場所の壁がいいよね、との編集さんとデザイナーさんのご要望をいただき、はりきって撮影に出かけてきました。
結局はいつものごとくミクロなので土地の固有性も剥がれてしまうのですが、自分としては小説を反芻しながらその場所を歩き、壁を見る、という行為がとても新鮮でした。
佐藤さんフィルターを一枚加えると、街が複層化して表情を変え、皮膚の毛一本一本までもが鋭敏になった感じとでも言えばよいのか。たぶんいつもより増して奇怪な動きをしていたことと思われます。
※ちなみに「移動動物園」が廃屋っぽい一軒家の金属扉、「黄金の服」が線路高架下の壁です。

佐藤さんの文章は、当時の人々よりも、現在の私たちにこそ響くのだろうな、と思います。華々しくも何ともない淡々とした日常を、私たちがもがきながら生きていることに丹念に焦点を当てている。佐藤さんが命を削りながら綴った言葉の世界と向き合って、一語一語大切に読みたい本です。

装丁は名久井直子さん。
『海炭市叙景』からのこの3冊、ともに彼女が手掛け、通しで統一されたデザインになっています。興味のある方、よかったらどっぷりと佐藤泰志さんの世界に浸ってみてください。

 

 

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2011.05.14

『建築としてのブックガイド』

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『建築としてのブックガイド』が明月堂書店より今年2月に発売されました。

「コンセプチュアル・ブックガイドシリーズ01」と銘打ったこの本は、建築と題名に付くものの、建築が専門でない人ばかり25組が書いた書評エッセイ集。つまり、イメージとしての建築であり、人によってはかなりの意訳も含みます(それが面白い部分でもあります)。

ブックガイドをひとつの建築物に見立て、【玄関】【リビング】【浴室】【ベランダ】など全27のパートに分けてあるのですが、私は今回、そのなかの【外壁】を担当しました。
お話をいただいた時は、オハコすぎて何から手を付けたものやらと思いましたが、悩んだすえに、
「外のふくらみ」つげ義春、「デュビュッフェ」針生一郎ほか、「おじいちゃんの封筒」藤井咲子、「猫町」萩原朔太郎、「informal」セシル・バルモンド
の計5冊の書評を書きました。
本屋でみかけた際などはよかったら覗いてみてください。カバーのつくりがちょっと面白いことになってますのでご留意を。

 

 

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2011.01.23

『生活考察』vol.1&vol.2

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生活考察』という素敵な雑誌があります。
どういう雑誌なのか、まず以下の説明を。

編集者辻本さんのブログよりー

本誌は、タイトル通り、〈生活〉について考えることをテーマにしています。
よって、“ある種の”ライフスタイル・マガジンではあります。
しかしながら、いわゆる定石の「理想の生活」「ワンランク上の生活」及び「理想の生活を実現するためのアイテム」等にとりわけ重きを置きません。かつ雑誌をあげて提案する「スタイル」もとくに持ち合わせておりません。
むしろハナから「スタイルの提案」を放棄し、積極的に多様なスタイルにまみれてみること——そこから、現代を“楽しく”サヴァイブするための術・発想・考え方を模索していきたいと考えております。
実用的な情報ばかりにとらわれ、「考えようによっては得るところがある」かもしれぬ〈何か〉を取りこぼさないように。
『生活考察』は、<生活と想像力>をめぐる雑誌です。

私は昨年の春、たまたまネットで『生活考察』創刊を知り、この魅力的な面々でこの内容!と発売前に予約。役に立つとかHOW TOとか理想とか、溢れる情報にすっかり辟易していた頭にずずっと浸み込んでくる、多様かつ奔放なテキストを堪能しました。

そして次号を楽しみにしていたところ、なんのご縁かこの私にインタビューの申し出を頂いた。テーマはむろん「生活と壁」、とうとうと喋ったせいか結果8頁の掲載となり、のうのうと恥をさらしてしまいました。
なのですが、まあ私の頁はともかくとして、vol.2は連載陣も増えますます面白くなっています。読後、ジャパネットたかたにもシュロに興味津々になりました(読めば分かる)。
ご興味のある方はもしよかったら、どちらからでもご覧になってみてください。
取扱店舗も増えてきているようです。vol.3も楽しみ。

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2010.08.01

「壁写真展」投稿写真をWEBにアップしました、そして引き続き

銀座リコーギャラリーで開催していました壁の写真展に、お越しくださった&写真を投稿してくださったみなさま、どうもどうもありがとうございました。おかげさまで先週の日曜日に、ぶじ展示を終えることができました。

会期中に投稿して頂いた壁写真を、下記アルバムにアップしています!

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Picasaウェブアルバム「壁」投稿作品
※左のサムネイル、もしくは地図上の壁写真をクリックしてください。投稿して頂いた方のお名前とともに写真が表示されます。

7/14〜7/25の12日間という短い会期中に、なんと計219枚も投稿して頂きました。
遠くはポルトガルの壁からギャラリーのある銀座の壁まで、私は会場のiPadでわくわくしながら拝見していました。

初めは壁なんて投稿して頂けるだろうか、と弱気になって、「街を歩いてみつけたもの、にしたらどうかな?」とか、血迷っていた時期もありました。
でも始まってみれば予想をはるかに超える数!に、とてもうれしくありがたく。
なかには遠方の方から「遠くて展示は見に行けないけど、投稿だけでも参加したいです」などとコメントを頂いたり、あと日を変えて、撮るごとに何度も投稿してくださったりする方も。

複数枚投稿してくださる方も多く、見ていくほどにそれぞれの方の好みがはっきり分かってきます。驚いたり共感したりの連続で、見ていて飽きないです。
地図に壁をプロットすることによって、とたんに壁がもうひとつの顔を持ち始め、輪郭を帯びてくるんだなぁと。
そしてその場所が、既知かそうでないかによっても感じ方もさまざまで、受け取り手によってまたさらに広がっていく。ギャラリーにいるとそうした生の反応を拝見することができ、とてもうれしかったです。

今思うのは、投稿サイトにコメント欄を設ければよかったかな、ということ。
投稿しにくくなってしまうかも、と思いやめてしまったのですが、例えば、周囲には何があったの?壁の材質は?どんな匂い?音は?その時どんな気持だった?とか共有したい、知りたい、と思ってしまったので……

このPicasaアルバムですが、展示終了後も引き続き、投稿をして頂いた壁をアップできたら、と思っています。ぼちぼちと、細々と続けて行きたい所存です。

なのでもし、もしも、気になる壁をみつけたら
<underconstruction1@mac.com>
のアドレスに、写真と位置情報を添えて送って頂けたら、と思います。
そしてよかったら、コメントもぜひ!
※壁でないもの、公序良俗に反するものの場合等アップできないこともありますのでご了承ください

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